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- Date:2025年04月05日
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以前、薫は恥をしのんで、一度だけ恵に尋ねたことがある。
痛いの…?
もじもじしながら、要領を得ないまま、唐突に尋ねたものだから、恵は最初、きょとんとした顔をしていたが、薫の羞恥に満ちた表情を見て、その旨を理解した。
「痛いわよ。」
平気な顔で、しかも、「すごく」、と付け足した。
意地悪な笑みを浮かべ、
「腰がどうにかなっちゃうかと思うわよ」
と言う。
恵にとってみれば、目の前で顔を赤らめながら、あたふたとする薫を、面白半分にからかっていたのだが、あまりにも心配そうな顔で俯く薫を気の毒に思ったのか、最後は諭すような口調で言った。
「でもね、温かいの。」
「温かい?」
「そう。辛いのは最初だけよ。そのうち、温かな波に包まれている感じになるわ。好きな人なら、その思いは尚更ね」
今、目の前の夫と一つになろうとしている。それは嫌ではなかったが、不安でもあった。なぜなら、自分がどうなるかがわからなかったからだ。
淫らになった自分を、剣心にはみせたくない。その不安が薫の脳内を巡っていた。
「少し、足を開いて…」
剣心はそう言うと、己の男性自身を薫のその部分にあてがった。ぬるり、と言う感触が下腹部を覆う。何度か亀裂を撫で回すようにした後、下腹部が火をつけたように熱くなった。
痛みが、走る。
腰が、割れそうになる。
狭いその部分を、無理して押し上げているような感覚だ。
「んッ…!!」
思わず、苦しそうな声が薫の口から漏れる。
「もう少し…我慢して」
剣心は眉根に皺を寄せて、自分の下腹部を薫の下腹部にこすりつけた。
やがて薫の奥までたどりついたのか、剣心は薫の顔を見下ろした。
繋がっている…
一つになっている…
その思いが、二人に至福の時を与えていた。
剣心の額から汗が流れ落ち、薫の頬に落ちた。
「痛いでござろう…」
肩で息をしながらも剣心が気遣う。だが、薫はうっすらと涙を浮かべながら首を横に振った。
「嬉しい…ようやく剣心と…」
それ以上は声にならなかった。だが、声に出さずとも、薫の思いは十分に伝わってくる。剣心の中に、いままでにない薫への愛しさが生まれた。
生娘特有のしめつけが、剣心を快楽へと誘う。剣心は少しずつ腰を動かし始めた。薫から溢れる水音と、肌と肌がこすれあう音が、薄闇に広がる。時折苦しそうな、だが、切なそうな薫の喘ぎがその音と混ざる。
始めはゆっくりと、だが、次第にそれは激しさを増していった。今にも弾けそうな熱い滾りを必死に押さえながら、剣心は更に薫を責める。突くたびに、額から汗が飛び散った。
「かおる…かおる…」
うわ言のように新妻の名を呼べば、それに答えるかのように、剣心の背に回した薫の腕に力がこもる。
―――温かな波に包まれている感じになるわ
薫は恵の言った意味を、初めて理解した。
腰を動かしている間も、剣心の指は時折薫の乳房を摘まみ、掌でもみしだき、快感を与えていく。その快感は、下腹部がこすれあうたびに、増していくような気がした。
そして―――
剣心の肩が大きく揺れた。荒い息が更に荒くなり、腰の動きが早くなる。
その瞬間、薫は今までに見たことの無い剣心の恍惚とした表情を見た。
一瞬、泣いているのかとさえ思った。
堪えきれなくなった熱い滾りは薫の中へ全て出され、ついには薫の上で果てた。
沈黙が続く。だが、剣心の手は薫の髪を愛しげに何度も撫でていた。時折、啄ばむような口付けをして、抱きしめる。
痛みと驚きと戸惑いを感じながらも、薫は幸福の中にいた。
夫婦の契りを交わしたことへの満足感、そして、決して人には見せることの無い剣心の夜の顔。自分だけが知る夫の顔である。
薫も力いっぱい剣心を抱きしめた。
やがて二人は互いの顔を見つめあう。
照れくさそうに笑う剣心の瞳が、まるで子供のようだった。
「大丈夫でござるか?」
ようやく剣心が声を出した。
「うん…」
それだけの会話が、なぜか愛しく感じられた。
剣心は薫に夜着を羽織らせると、後ろから抱え込むように座った。薫も剣心の胸に、体重を預けている。
少し汗ばんだ薫のうなじに、剣心が顔を埋めた。
「何…?」
薫が視線を剣心に向ける。
しばらく黙っていたが、「いや…」
と軽く首を振った後、
「幸せすぎて、怖いくらいでござる」
と言って、回した手に力を込めた。
その手に自分の手を置き、薫が笑う。
「比翼の鳥…」
「比翼の?」
「そう。亡くなった両親が、そうだったの。全くそうは見えなかったのだけれど、絆はとても強かった。母が早くに亡くなっても、父は自分の心の中にいる母を、ずっと頼りにしていたんだわ」
「そうでござるか」
―――私たちも…
薫はそう言って、剣心の顔を見た。
「私たちもそんな夫婦になれるかしら?」
薫の言葉に、剣心も薫の顔を見つめた。
「ああ…そうでござるな」
不思議な縁で結ばれた二人。例えどんなことが起ころうとも、繋いだ手は離さない。
「お父上やお母上に負けぬ位の夫婦にならねば、拙者、お父上から叱られるでござるよ」
ふふ、と薫が小さく笑った。
「そうね。父さんは、怖いわよ?」
剣心も頬擦りをしながら笑う。
触れた部分から、再びぬくもりが伝わる。
いつまでも、いつまでも、このぬくもりを忘れないように。
いつまでも、いつまでも、この手を離さぬように。
重なり合った影は、その夜、決して離れることはなかった。