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ウタカタノユメ

桃色りぼん

こんばんわ。

まもなく、実写化封切ですね。私は日曜日に、一人で行きます。
本当は剣心がわかる人同士で行きたいのですが、まわりには私のオタク活動を隠してあるので、「やだ、かおりさん、いいトシこいて何見に行くの?」なんて言われかねないので、黙っていきます。

期待せずに、期待して。変な言葉ですが、今、こんな気持ちです。

さて、新作「桃色りぼん」UPします。短編、あっと言う間に終わります。
恋のもっと前の段階。リボンがゆらゆら、心もゆらゆら。





珍しく、あの男が縁側で転寝をしている。
春まだ浅い、でも、日差しはたっぷり入るこの縁側で。
この人、どこから流れてきたのだろう。
道場に向かう途中で、ふと止めた足。
気になる男は、どんな夢を見ているのだろうか?

ひょんなことがきっかけで、この道場の食客となった男の名は、緋村剣心という。年は二十八だと言っていた。
本物の人斬り抜刀斎だということがわかって、びっくりしたなんてもんじゃなかったが、柔和な顔つきからはあまり現実味が湧かない。もちろん、喜兵衛兄弟を倒したあの戦いぶりを見れば、やっぱり「抜刀斎」なのかと頷きたくはなるが、見た目はまるで女子(おなご)のようだ。

偉そうに「誰にだって言いたくない過去の一つや二つある」なんて、言ってしまったが、そこは建前。この綺麗な男に、一体どんな過去が隠れているのだろうか。
神谷薫は、しばらくその場を動かず、剣心の姿を遠目で見ていた。

「綺麗だ」と思ったのは、ふたつある。
ひとつは、その顔立ち。確かに頬に十字傷をこさえてはいるが、それでも見劣りはしない。いや、不謹慎かもしれないが、それがいい。何か過去を背負っているのが、胸を打つ。絵草子の主人公にでも仕立てたら、きっと売れるのに、と思うほど、端正な顔立ちをしている。
あの、傷…十字傷って、どうやったら出来るんだろう。ちょっと、触れたい…と思って、やだ!と自分を否定する。何考えてるの、私ったら。はしたない。
顔がカーッと熱くなった。

もう一つの綺麗。
あの、剣捌きである。喜兵衛兄弟とその一味を倒した時の戦いぶりは目の前で見ている。尊敬する父でも、あんな戦いはしなかった。いや、出来なかった。神谷活心流は人を活かす剣。そして、剣心が使うあの技は、人を殺す剣。
活心流の理からいけば、決して相容れぬはずなのに、あまりの美しい型に見惚れてしまった。そして、つい、言葉に出てしまったのだ。

――ああ、綺麗…

けれど。今の剣心は、同一人物とは思えないほど、ダラリとしている。
ああやって、柱に背中を預け、後生大事にあの逆刃刀を抱え込むように眠っている。
侍にとって、剣は大事なのはわかるが、そこまで彼はあの剣を離したくないのか。
そおっと近づいてみる。かさりと葉っぱを踏んでしまった。

「ん?薫殿?」

優しい瞳で薫を見る。ああ!勿体ない。せっかくの機会を。

「剣心、そんなところで寝ると、風邪ひくわよ。」

と、最もらしいことを言ってみた。本当はもっと違うこと考えてたくせに。それを悟られまいとして、冷静に話す。
そうでござるな、と笑って、伸びをした。
さあて、夕飯の支度をしておくか。
綺麗な男は、よし、と言って立ち上がった。

「何か食べたいものは?」
「べ、別にいい。剣心の作ったものなら、全部美味しいだろうから」
「人を乗せるのが上手い人でござるな。それならば、腕によりをかけてしまうでござるよ?」
「お、お願いします」

何だか、照れる。きゅんとする。男の人って、もっと怖いと思ってたけど。
「そうそう、薫殿」
「え?何?」
「あまり綺麗な瞳で見られると、拙者、照れるでござるよ?」

あー、ずっと見てたの、わかってたんだ。

薫の顔が真っ赤になる。
「ご、ごめんなさい。あんまりよく寝てたものだから!」
決してあなたに見惚れていました、だなんて言えません。

じゃあ、道場に行きます。
薫は真っ赤になって背を向けた。桃色リボンがゆらゆら揺れる。
十七の浅い春。恋とはまだ言えない、けれど、何故か心が跳ねてしまう、いつもと違う浅い春。

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