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ウタカタノユメ

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その空は、高く①

こんばんわ~

寒いですねぇ。私、毎晩、湯たんぽ入れてるんですよ。足がすごく冷えちゃいましてねぇ。本当は素足で寝る方がいい、ってわかってるんですが、もう冷たくて冷たくて我慢ならず、ソックスと湯たんぽで足を温めながら寝ています。

NHK大河ドラマ「八重の桜」を見始めました。やはり幕末モノはいいですね。綾瀬はるかちゃん、可愛い!(子役も可愛い!)ちょうどTUTAYAから「風、光る」を17~32巻までオトナレンタル(笑)してきたのです。時代もかぶっていてますます面白い!
ここに剣心出てきたら、どんなにおもしろいだろう!とかいろいろ妄想しながら見てました。(「風、光る」はまた後日感想などを書きたいと思います)

さて、その「八重の桜」でも出てきた勝海舟が、今回ゲスト出演(笑)実は、アニメ版の「勝海周編」のストーリーが好きだったんですね。アニメに関しては賛否両論で、私も全部OKって言うわけじゃないんですが、勝編は地味だけどじ~んと来る話でした。
拙宅では、「其の男」で勝と剣心を会わせています。今後、何かしら、剣心と付かず離れずで出演していただく…と思います。やっぱり知恵袋、なんだよなぁ、あのヒト。

では、新作です。京都へ行くことを戸惑う剣心の背中を押したのは…?前編・後篇でお送りします。





その日は少し風が吹いていて、けれどそれは初夏の日には気持ちの良いほどの風だった。
心地よい風は、緋村剣心の身体を優しく包む。剣心は束の間空を見上げた。少しだけ傾きかけた太陽の光が、眩しかった。
こんなにいい日なのに。太陽の光も、木々の揺れる音も、全て気持ち良いのに。

何故、あなたは逝った…

あれほど、この国の行く末を思い、全てを賭けてこの国を守ろうとしていたのに。

何故、あなたは逝った…


暗殺された大久保卿の思いを、官邸で聞かされた。斉藤の怒りにも似た決心を知り、「お前はどうする?」と問われたとき、剣心の脳裏をかすめたのは、他の誰でない、神谷薫の泣き顔だった。
自分は、多分、あの少女にひかれ始めている。できれば、このままもう少し傍にいたかったのだが、大久保の死が剣心を動かそうとしていた。だが、まだ一歩の所で踏み出せない。好きな女を東京に残して行く寂しさと、再び人を殺めてしまうかもしれない不安が、剣心の心を追い詰める。がんじがらめだ。どうする、と自問する。
自分は関係ないのだと、このまま東京にとどまるのか。
それとも、不殺の誓いを侵してでも、この国に害を及ぼす志々雄を倒しに京都へ行くべきか…橋の上からぼんやりと流れる川の小さな波を見ていた。
揺れる波は、己の心。答えが出ない。
そのとき、ふと、あの男の顔を思い出した。

――なんかあったら、オイラを訪ねて来な。

遠慮のない物の言い方は、どことなく生意気な小童を思い出させる。この街に着いたばかりの時、たまたま声をかけられた。飄々としているが、隙は決して見せない。自分と同じ匂いのする男

――勝海舟…

彼なら、なんと言うだろうか。自ずと、剣心の足は、勝の家へ向かっていた。

勝の住まいは、以前それとなく調べておいた。と言っても、そんなに難しいことではない。あの「勝」である。今のこの時代を作った一人と言ってもいいその男は竹藪に囲まれた小ていな家で、気ままな老後を過ごしていた。


「おう、久しぶりだなぁ。」

会ったのはこれが二回目だと記憶している。それでも勝は剣心を忘れず、まるで旧友を迎え入れるような温かい眼差しだった。
「まあ、上がんなよ。」
そんなところで、突っ立ってんじゃねえよ、と、相変わらずぶっきらぼうな口のきき方だ。風呂の用意をしていたらしい。端っぱしりにした着物のまま、剣心を招き入れた。
「失礼する」
剣心は腰の物を身体から離し、一礼をして室内に入った。
「娘がさ、あいにく出かけちまっててなぁ。ほれ、こないだの宮様、覚えてるかい?時々宮様の所に話し相手で行ってるんだよ。何を喋ってんだかオイラは知らねえけど、まあ、アレだ。女の長話ってやつだなぁ」
手拭いで顔を拭くと、皺がくっきりと目立って見えるような気がした。
「弟子も買い物行ったきり帰ってこねえ。ったく、最近の若ぇモンはよぉ…」
口の中でもごもごと愚痴を言う。まさか、目の前の男が、かつて江戸城に出入りし、時の将軍に知恵を授けていたとは、誰も思うまい。
「何にもねえなぁ。ま、茶で勘弁してくんな。夕方のバカっ茶になっちまうがな」
常に娘が茶の用意だけはしているらしい。部屋の隅に用意されていた小さな盆の上に、急須と湯呑が伏せてあった。
「おかまいなく」
剣心は軽く頭を下げた。そして、目の端で、勝の動作を一つ一つ見ている。
自分の事を、ジジイと言って笑うこの男は、決して隙を見せない。幕末を駆け抜けた男ならでは、だろう。
湯呑に片手で茶を淹れた。勢い余って茶がこぼれそうになるのを「おっと」と言って寸でのところで止めた。

「天気がいいなぁ」

大きなため息をついたあと、部屋から少し体を伸ばして、空を見た。鳥のさえずりが、耳に心地良かった。

「こんな天気のいい日にな、あのバカヤロウは…」

剣心は顔を上げた。

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