恋する季節 Category:恋する季節 Date:2012年10月25日 こんばんわ。ふと思い立って、超短編を書きました。10分程度で書きましたので、全く中身も濃くありません。ほとんどひらめき(笑)恋をしているのは、薫ちゃん、あなただけじゃなさそうよ。 うららかな、春である。陽の光は、とろけそうで、縁側に座っていれば、自然こっくりこっくりと船を漕ぐ。今日は稽古も休みで…と言っても、門下生は出来の悪い生意気なガキだけど、と自分の中で毒づく。出げいこだってあるわけじゃない。陽の光にあたりながら、春の風につつまれている心地よさ。そして、聞える鳥の声。風の音。ざわめく葉。いつもの年と違うのは、傍に優しい笑顔があること。ああ、幸せだ。柱にもたれて、そんなことを考えていた。ぱん、と洗濯物を大きく振った。よし、真っ白、と声がする。あの声にももう慣れた。今では声がしないのがおかしいほどに。けれど、二人の距離は縮まることもなく、いつも平行線をたどったまま。それがはがゆくて、狂おしい。恋を…しています。切ない、恋です。報われることなどないだろうと、わかっているけれど、どうかまだ、私の恋にとどめをささないで。今は、この幸せに揺蕩っていたいのだから。「剣心…けんしーん」「なんでござるか?」「なんでもないの。ちょっと声が聞きたかっただけ」寝起きをいいことに、少し甘えてみた。「昼寝もいいが、風邪ひくでござるよ?一枚羽織った方がいい」そう言って背中を見せた居候の頬が、ほんのり赤くなったことに、恋する少女は気づくまい。――無意識というのは、酷でざるな…ひとりごちたこの言葉も、あっという間に風に流された。恋を…しています。泡沫のような恋です。触ればきっと消えてしまう、はかなげな陽炎のような恋。どうか、まだ消さないで。夢をみさせてくださいと、願う少女の恋心。 [21回]PR